真島爆ぜるSS:2 「夢の中」 「うー……」 身体中熱い。頭がボーっとする。 オニのカクランとかどぶろー先生に言われたが言い返す気力もなく、布団から出られない。
いつの間にかオレは真っ暗闇の中に立っていた。 起きてるのか寝てるのかわからない、ぼんやりとした世界。 「オレ……死ぬのかな」 ぶるっと身体が震える。 まだどぶろー先生みたいに強くもなってない。 こんなガキのうちに死ぬなんて嫌だ。 あわてて頭を振って深呼吸。落ち着け、オレ。 暗いのに目が慣れてきたら、すぐ近くに女の人がいた。 茶色いくるくるした長い髪の毛の、制服の女の人だ。 顔はよく見えないけど、オレに気付いてちょっと笑った。 「大丈夫。すぐ治るよ」 「…………へ?」 「風邪。死んだりしないから大丈夫」 「あ……うん」 さっきのひとりごとが聞こえてたみたいだ。 「またすぐ先生と一緒に特訓もできるよ」 オレの前にしゃがみ込むと、揺れた髪の毛がオレの肩に触れた。 ――夢じゃないのかな。でもこんなに近いのに、やっぱり顔は見えない。 「だから今はちゃんと休んで。風邪なんかすっとばして元気にならなくちゃね」 「うん……そうする」 風邪のせいか、ふつーのガキみたいなしゃべりになっちまってる。 でもまあいいや。風邪だもんな。 ――と、急に頭がひんやりした。 それに合わせるようにまわりが明るくなってきた。 「――もう行かなきゃ」 「あ、待って!お姉さん、誰?名前は?それに顔も……っ」 「また会えるよ」 「――――っ!」 「おお零、起きたか」 「……どぶろーせんせー……」 起きたら道場の和室の布団の中だった。 ずるり。おでこから冷たいタオルが落ちてきた。 先生がのせてくれたのか……。 汗びっしょりのオレの身体を先生があったけータオルできれいに拭いてくれる。スッキリした。 新しいTシャツと短パンが肌に気持ちいい。 おかゆを食べさせてもらって薬を飲んだら、すっかり元気になった気がする。 「まだ寝とれ」と言われたからそのまま布団に倒れ込んだ。 そうしたら急に眠くなってきた。腹もいっぱいになったからな。 オレは眠気にまかせて目を閉じる。 身体中が布団に沈み込んでゆくような感覚。 どぶろー先生のおまじないの声が遠くなってくる。 さっきいい夢を見た気がするけど、思い出せない。 まあいいや。とにかくたくさん眠って早く元気になろう。 そうしたら、きっと……。
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