デルトラSS:アニメ版



「背中」



「バルダのお母さんだ」

「……………………」

リーフの言葉に、バルダの背中が小さく震えた。

広くて大きな背中が、なぜかとても小さく見えた。

そうなんだ、この人もお母さんを……。

大人のくせに、考えなしで無茶ばっかりする情けない人、そう思ってたけど。

この人も、背負ってたんだ。

トパーズの力でならきっと会うことはできる。

でもこの人はそれを望まないだろう。

お母さんの敵を討つまできっと。

私がお母さんに会った時、この人は何を思っただろう…。

アクババに立ち向かおうとする背中は、泣いていた。

涙の代わりに勇気を振り絞って。

――でも、もう二度も彼を死なせたくない。

リーフも悲しむし、私だって嫌だ。

お母さんだって、そんなこと望んでない。

リーフもきっと、私と同じ考えだったと思う。

「すまなかった」

彼のマントに、……お母さんに包まれて、冷静さを取り戻せたようだ。

――よかった。

もしものことがあったら、お母さんの敵だってとれないじゃない。

命の百合だってあともう一回分しか残ってないんだから。

これ以上悲しい別れはまっぴらよ。

「やさしい木」に包まれて、それでもいつでも戦えるような体勢で眠るバルダ。

お願い「やさしい木」。

あなたのことを認めてくれた彼を、やさしい母のぬくもりで包み込んであげて。

幸せな夢が見られるよう、祈ってあげて――。




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